あおぞら共和国にて

すべての人に星空を。

 3月1日~2日、山梨県北杜市にある「あおぞら共和国」(難病の子どもたちとその家族のためのレスパイト施設)にて、「ウィンターキャンプ2019」&「RDD(Rare Disease Day世界希少・難病性疾患の日)2019 イベント」が開催され、それぞれプラネタリウム投影、夜の星空観望会、講演、で参加させていただきました。
 星つむぎの村メンバーは、高橋、跡部、野寺。 観望会には、北杜市内から、スターラウンド八ヶ岳ナビゲーターの木村さんにもきてもらいました。

 

 いろんなことが盛りだくさんのイベントでした。
1日目。「あおぞら共和国」交流棟の竣工式、RDD開会式、ウィンターキャンプ建国式、その後、プラネ、お食事会、観望会。
参加者は全体で、60名ほど? 当事者ご家族は7組です。主体となっている難病のこども支援全国ネットワークは、全国7か所で行われているサマーキャンプを30年近く続けておられる団体で、わたしたちも、東北や神奈川、熊本などにお邪魔させてもらっています。そのキャンプはそれぞれ宿泊施設を借り切ったりして、150名~200名が集まる大規模なものですが、一方で、小さなグループでも気兼ねなくいつでも自由に使える施設がほしい、という思いをもっておられました。そこに山梨県北杜市にある広大な土地が、彼らに与えられ、7年前はただ松林だけだったその土地に「ふるさと夢プロジェクト」が立ち上がり、さまざまな素晴らしい出会いと思いと想像絶するご苦労があり、コテージがだんだん出来上がり、50名ぐらいの方が一度に泊まれるようになり、ついに、100名が集うことのできる交流棟が完成した、というわけです。そこに至るまでの「夢プロジェクト」物語、ほんとうに1冊の本にしてほしい!と強く願います。 

 今回、その物語をつくりあげてきた方々が集まっての場で、プラネタリウムや、何よりも快晴にめぐまれて満天の星空で観望会ができたこと、この上ない幸せでした。この場所は、コテージに囲まれた野外広場が素晴らしく、自由に寝転がって、一晩過ごすことだってできる場所。野寺くんや木村さんが制作したユニバーサル望遠鏡も大活躍。観望に適する椅子をたくさん並べ、シートに多くの人が寝転び、そして、カウントダウンをして明かりを消して満天の星空をみんなで一緒に。
 八ヶ岳と南アルプスに抱かれる風光明媚な場所。山紫水明をうたう北杜市に、やっぱり「星」ももっといれないとね、と、みなが口々に。

プラネタリウムは2日間、6回投影をして、これまで何度かご覧になっている方も、はじめての方も、そしてVIPなお客さま(彼女がご覧になるのは、なんともう3回目)も・・今回はなんと「寝転んで」一緒に見ていただきました。

RDD講演会は、7つの講演がありました。
普通学校に通う重症心身障害児であるみのりちゃんが、どれだけ周囲の子どもたちと楽しく遊び、互いに生きる姿を見せてくれるかというお話、甲府の支援学校に通う中学2年生のまゆなさんの「平等への道」という素晴らしい作文、キャンプが生み出してきたもの、そして、あおぞら共和国のこれまで、これからのお話・・どれもこれも、心うつものばかりで、知らなくて申し訳ないと思ったことも多々あり、同時に、ここに呼んでいただけたことの幸せを心から思いました。

そして心底励まされたこと。
1つ目
 あおぞら共和国をつくる中心メンバーでいる仁志田先生は、新生児医療の世界的権威。(と、他の人に言ってもらわないと、その気さくさや愛情深さ、お酒好きな様子からは、ただのいいオジサンにしか見えないのですが)
新生児医療がどんどん高度に発達するにつれ「この子を助けることがほんとうに家族の幸せと安寧をもたらすのか」という呻吟の中で、先生に光をあてた本が、「パワーズオブテン」だったというのです。
 そのことを書かれた先生の本「出生と死をめぐる生命倫理―連続と不連続の思想」を、私の講演後、即座にサイン入りで手渡してくださいました。
パワーズオブテンに淡々と描かれる「世界の連続性」。「それによってすべてが連続した世界であり自分たちがこの宇宙の一員であることを天啓のように直観したことが、一陣の風のように、私の心のモヤモヤとした霧を払ってくれた」と。
 広大な宇宙空間の中の点のような地球、連綿と続くいのちのリレーのはての今、ここに生きる私たちという視点を得ることが、なまなましい「生と死」に向き合う医療従事者たちにとって、きっと何らかの助けになるだろう、とずっと思ってきたことを、先生は、30年以上前にご自身の体験をもって実感していたのです。
 私にとってもパワーズオブテンは、20年ちょっと前、科学館で働き始めた最初のころに知り、やはり「この視点こそが宇宙のことを扱う意義」と思っていました。自分の中で、それをきちんと言語化できるまでにはその後、しばらく時間がかかりましたが、人々が生きていくための星空と宇宙の意味を、直観はしていたように思い、現在あるMITAKAというソフトの存在や、今使わせてもらっているUNIVIEWに出会ったときに、絶対これ、と思ったのも、パワーズオブテンが根底にあったからだと思います。
 自身の講演のとき、病室で母子に投影したあと、そのお母さんが翌日、「この子が生まれた日はNICUにはいった日で、当然のことながら空を見上げる余裕なんか一つもありませんでした。今日、お誕生日の星空をみせてもらって、その日の星空はこんなに美しかったことを教えてもらい、この子が生まれてきた意味をはじめて理解したように思います」とおっしゃってくださったということをお伝えしたことが、先生にも響いてくださったのだと思います。

その2
あおぞら共和国にとってこれまた大変重要な人である小口弘毅先生は、相模原の小児科医ですが、甲府ご出身。その「小口3兄弟とご家族」が、それぞれに、あおぞら共和国に深くコミットし、支えています。小口先生は、甲府一高ご出身で、その同窓会から、チャリティーウォークなども生まれ、そして、多くの寄付を集めるにいたっています。
いろんな意味で、小さく閉鎖的といわれがちな山梨にあって、子ども医療は「お隣の静岡や長野にくらべれば20年遅れている」という当事者のお母さんもいるほど。でも、その山梨で、地域とそのつながりを生かして、こんなにも頑張っている人たちがすぐそばにいたこと、これも、ほんとに「ちゃんとわかってなくてごめんなさい」の世界でした。
 このあおぞら共和国が、山梨にいる難病や障害をもつ人たちとまだ知らない人たちがつながる場にきっとなっていくこと、なれることを思い、そして、私たちの事務所が同じ北杜市内にあることに、ほんとに胸が熱くなりました。
 その先生たちが一生懸命翻訳して出版したのが「ヘレンハウス物語-世界ではじめてのこどもホスピス」。この本の売り上げや印税はすべて、あおぞら共和国に寄付されるとのこと。それだけでなく、「難病や重い病気をもつ親の心情をこれほど繊細に表現し、また、この子を一人の人間として認めてほしいと訴えた本は他にない」と先生があとがきで書かれていることからも、これはぜひ読みたい本です。
 こちらのページに情報があります。
http://ymkp.net/aozora/

他にも素敵な出会いがあり、なかなか書ききれませんが、ほんとに貴重な2日間でした。関係者のみなさまに、深く感謝いたします。

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