東北に星を届け隊2016夏

今回は7月30日・31日の2日間で、大船渡・陸前高田・気仙沼・南三陸を回りました。総勢7名。星つむぎの村の東北訪問チームとしてはこれが最初となりました。その2日間の様子をレポートします。

★7月30日(土)午前中 大船渡市YSセンターにて「星空を旅しよう~星つむぎの村」

大船渡市社会福祉協議会とNPO法人おなはなしころりんさんの主催。宙詠みサークル朔さんからも8人くらいの方がお手伝いに来てくだり大助かり。おはなしころりんさんは、絵本コーナーを作ってくださいました。

10時の開始を待ちかねたように、親子連れのお客様が、次々と。4回のプラネタリウムも3回目までがあっという間に満員御礼。地球ゴマ、星ストラップ、星座カードの工作コーナーも大繁盛。スタッフ総出で汗だく(エアコンがなかった!)で子どもたちと楽しい時間。大船渡のBRT(バス高速輸送システム)沿いには、大きな新しいホテルが何軒も立ち、海岸には大きな防潮堤。目に見える復興はたしかに進んでいるようです。

  

★この日の昼食は陸前高田市広田町の長洞元気村

長洞地区の仮設住宅団地の自治会の名称が「長洞元気村」なのです。「村」の産品を使ったお昼をいただきながら、村長の村上さんからお話を伺いました。震災直後の様子、そこから集落のコミュニティをどう維持していくか。そこには、子どもたちの「笑顔」と、高齢者の「元気」が不可欠なこと。元気村が支援や補助に頼らない持続可能な運営をしていること。私たち「星つむぎの村」にとっても、それ以上にこれからの少子高齢化の進む日本全体にとっても、お手本になるような場所でした。

コミュニティを離れ、体を壊してしまい、「長洞に帰りたい」と訴える一人の高齢者を救うために、行政の前例主義と戦った彼の「できない理由を並べるより、できる方法を考えろ」という言葉には、とても力がこもっていました。

★30日午後 陸前高田市 滝の里仮設住宅

仮設住宅の集会所でプラネタリムと工作ワークショップをしました。初めて訪れたときにプラネタリウムを見てくれた野球少年たちも、なんと大学生になり、それぞれの道を歩み始めたとのこと。時は確実に未来に向かって進んでいるのだと実感しました。


いつもお世話になる自治会長さんや、おばあちゃんたちが来てくださって、プラネタリウムでは座布団をまくらにプラ寝タリウム。「望遠鏡で木星を見せてもらったのを覚えている」というおばあちゃん。初めてのプラネタリウムに感動してくれました。

 

 

 

 

 

陸前高田の仮設住宅は平成30年までに解体や集約が行われます。「せっかく仲良くなった人たちがばらばらになってしまうのが心配」と、自治会長さんが話してくださいました。

★30日(土)夜 気仙沼復興商店街 南町紫市場

前回と同様に、みなみまちcadoccoでプラネタリウム(4回)と工作ワーク。商店街駐車場で、望遠鏡による惑星観望(土星・火星)を開催しました。

移動の途中で通過した鹿折地区(第18共徳丸が打ち上げられていた場所)でも、かさ上げと区画整理が進み、災害公営住宅も何棟か完成していました。

 

 

 

 

 

この仮設商店街も新たに移転する場所が決まったとのこと。そこでも、cadoccoのような子どもが集える場を作るのだそうです。子どもは地域の宝。特に被災地においては希望の光のような存在なのだと感じました。

 

 

★気仙沼の宿は、ホテル望洋。

気仙沼の港を見下ろす高台にあり、震災後は避難所になり200人もの避難者を受け入れていたところ。女将さんと社長さんが出迎えてくださいました。その社長さん、ご自身が天文少年だったと。「誠文堂新光社の全天候星図を持っいていました。でも、それも自宅が津波で流され残っていません」「次回は、ぜひうちの屋上を使ってください」

港を出入りする漁船や市場の放送の音で早朝に目を覚ました翌朝、再会を約束して、気仙沼をあとにしました。
https://youtu.be/DDPkfAmsUL8

 

★7月31日(日) 南三陸町歌津の平成の森。

野球場や体育館などがあるスポーツ施設ですが、サッカー場があった場所に仮設住宅があり、まだ多くの方がそこで暮らしています。

今回は、本館の和室をお借りしての移動プラネタリウムと工作ワーク。10時のオープンを待ちかねたように、数家族が集まり、みなさんゆっくりとすべてのメニューを楽しんでいかれました。

 

 

 

 

今回の被災地訪問で訪れた各地で、子どもたちが落ち着いてプラネタリウムを見たり工作をしたりしている姿が印象的でした。前回までは、ドームの中で騒ぐといった落ち着きのない行動の子どもや、それを注意できない周囲の大人の様子に、心配が募ったですが、街や暮らしが平常を取り戻すのに比例して、子どもたちの心も安定を取り戻しつつあるのかもしれません。

最初に訪れた大船渡は、市役所や病院などがもともと高台にあり、津波の被害を免れたこともあり、もっとも復興が進んでいる街の一つです。そこため、新たな課題も真っ先に顕在化してきていて、大船渡の課題を解決することが他の被災地域のお手本になるのだそうです。「今のもっとも大きな課題はなんですか?」とお尋ねすると、「コミュニティの形成です」と NPO法人 おはなしころりんの江刺さんが教えてくださいました。滝の里仮設住宅団地の自治会蝶さんも、災害公営住宅などに移った際の高齢者の孤立が心配だとおっしゃっていました。長洞元気村は、そのコミュニティ形成に成功している例でした。こうして見ると、被災地の課題は、実は日本中のどこにでも見られる課題でもあると思います。

人びとがバラバラになりそうなこの社会で、しなやかに人々をつむいでゆく、星の輝きにはその力があると信じて、これからも活動をつづけていきたいと考えながら、山梨への帰路につきました。

※東北に星を届け隊の活動は、パルシステム東京さんの、震災復興支援基金「パル未来花基金」から助成をいただいて成立しています。